孫楚という男は、ある日友人に相談を持ちかけた。自分は役人であるが、俗世間の煩わしさにほとほとうんざりしており、竹林の七賢のような、俗世間を離れた暮らしをしたいと持ちかけ、思わず「石に漱ぎ、流れに枕す」ような暮らしをしたいと告げた。すると友人が笑って、「それを言うなら、石に枕し、流れに漱ぐ(すなわち、枕を石にして、水の流れで口を漱ぐような自然と一体になった暮らしをすること)じゃないか」と突っ込まれる。すると、学問にプライドを持っていた男は思わず、「いや、それで間違っていない。石に漱ぎとは石で歯を磨いて、流れに枕するとは、俗世間の煩わしさも含め、全て水で洗い流すことだ」と言い張った。
そこから、常に意地っ張りなことを漱石枕流、「石に漱ぎ、流れに枕する」というようになった。明治時代の作家、夏目漱石の名前もこの故事に因むといわれている。
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蛇足
ある村の祭りで、長が貴重な酒を貰った。だが、公平に分けたら分け前が少なく、物足りない。そこで、ある男が「今から蛇を描いて、一番早く描き上げた者が飲むことにしよう」と画策する。 実は、この男は絵が得意で、初めから自分が全部せしめる魂胆があった。そして、他の者たちもそれに納得して絵描きの勝負は始まった。男は器用にさらさらと描き終え、得意になって足まで描く余裕があるとばかり、足まで付け足してしまう。
しかし、その間に別の男が描き終え、そして賞品の酒を飲み干してしまった。始めの男は文句を言うが、後から酒を取った男は「お前の描いた生き物は足があるから蛇ではない」と尤もな意見を告げ、得意になっていた男を落胆させてしまった。
このことから「蛇足」とは、わざわざ余計なことまでしてしまうたとえとなった。また、物事が巧くいっているときに、調子に乗ってどんどん手を出すべきではないという教訓にもなっている。
朝三暮四
非常に猿と戯れるのが好きな男がいた。この男は家族のことも放っておいて、猿を可愛がるものだから、餌の時間になるといつも猿が寄ってくる。ところが、それが原因である日、奥さんに「猿の餌を減らしてくれないと、子供たちの食べる物までなくなってしまう」と窘められてしまう。困った男は何とか猿たちを籠絡しようとし、一斉に呼びかけた。これからは「朝には木の実を四つ、暮(ばん)には三つしかやれない」と告げるも、猿たちは皆不満顔。それならば「朝は三つ、暮は四つならどうだ」と言うと、何と猿は皆、納得してしまったのである。
そこから「朝三暮四」は、人を巧みに言いくるめて騙すこと、また猿の立場から、物事の根本的な違いに気付かない愚かな人を指す言葉となった。